愈しの雨『ワンサイドゲーム』第6弾。ミポリたんのイラストillust/25787810の【受け】からイメージして生まれたお话。雨の日だから许されることって、ありますよね。
试合中に降り出した雨が、ホイッスルに刺激されたかのように强く地面を叩き始めた。志保は折りたたみ伞を差し、ピッチに座り込んだままの比护に歩み寄った。制服のスカートの裾を気にしつつ正面にしゃがむと、比护は歯を食いしばって一点を见据えていた。――がら空きのゴールを。「试合、终わったわよ」「……ああ、そうみたいだな」「みんなとっくに引き上げたわよ」「……ああ、そうみたいだな」机械的な返事にため息を吐き、ゴールを振り向いた。「胜负の世界なんだから、こんな时もあるでしょ……」「违う!オレは负けたのが悔しいんじゃない!」突然声を荒げた比护に动じるどころか、志保はそれを冷たくあしらう。「逆ギレしないでくれる?ガキじゃないんだから」「后半は完全に守りに彻してた。胜ってたとはいえ、たかが2点差だ……工藤を下げないでもっと押すべきだった。调子こいて控えの试しまで……」志保に闻かせるためではなく、自分への戒めとして言叶が発せられていた。途中ならしな観ていない志保には试合展开が分からないし、そもそも彼女はサッカーをただの球蹴り程度にしか思っていない。「それに何だ、あのロスタイムの失点……?あれくらいカット出来ねーで、何が国立だ……アホかオレは」「そうね」间髪入れずに相槌を打つ。「アホでバカで……やっぱりガキだわ」ここで初めて比护が志保の方を见た。口は闭ざしたままだが、敌意剥き出しの目が全てを物语っている。「试合中も小さな子どもみたいにウロチョロしてて、目が回って仕方ないし……」「ウロチョロ……だぁ!?」「だってあなた、あっちにいたかと思えば……」比护が睨み付けていた方のゴールを指差す。「次の瞬间にはこっちにいるんだもの」今度は反対侧のゴールを。「ディフェンスが缓んでたんだよ。あのスペースを突かれたせいで……」ふと言叶を切って、比护はニヤリと口角を上げた。「そんなにオレのことばっかり観ててくれたんだな」思わぬ切り返しに一瞬目を见开いた志保だったが、すぐさま呆れ颜に戻って彼をがっかりさせた。「嫌でも目につくのよ、その派手な头が……」「またそれかよ……」「目立つものを追ってしまうのは、动物としての本能だからやむを得ないわ」重ねて言ってから、余计に言い訳めいていたかと后悔した。「で?何か収获はなかったの、ライオンさん?」「ライオンって……」口の中でゴニョゴニョ文句を言いつつ、比护は试合を振り返っていた。ようやくそのくらいの冷静さを取り戻すしてきたようだ。いきり立っていた肩からも力が抜けている。「あの1年……フォワード向きかもしれない。メンタル弱くて気に食わねーけど」「あら、私が锻えてあげましょうか?」「立ち直れなくなるからやめてくれ。あんなんでも大切なチームメートだ」ぬかるんだ地面の上であぐらをかき、ボソッと呟く様子が、逆に彼の必死さを表していた。「捕って食ったりしないわよ」「どーだか」「孤高のライオンを気取るのは胜手だけど、ボール游びは1人じゃ出来ないんだから……早く戻って、反省会でもやりなさい」「言われなくてもそうするよ」比护はゆっくり立ち上がると、降りしきる雨に対抗するかのように両腕を突き上げて、大きく伸びをした。「なぁ……フツーこういう时って、伞を差し出して优しい言叶の1つや2つ、かけてくれるもんじゃねーのか?」「あら、かけてあげてるじゃない」「どこが……」もたげた头を左右に振る比护。「それに、雨は涙を隠してくれるでしょ?」志保は身体を倾けて比护の颜を覗き込んだ。「泣いてねーよ、バーカ!」伞を夺われた。水気をおびた髪と制服が、一気に志保の身体にまとわりつく。「何するのよ」志保が足を蹴ろうとするのをかわした比护は、「いつも同じ手にばっかり乗るかよ」と言って彼女の肩を引き寄せた。折りたたみ伞は、スポーツマンと一绪に入るには小さ过ぎる。ユニフォーム越しの腕はすでに冷え切っていた。「何するのよ、濡れるじゃない」「濡れないようにこうしてるんだろ」穷屈な姿势のまま、校舎に向かって歩き出す。「下心丸见えなのよ」「まあ、オレはライオンだし?油断してると捕って食っちま……いてっ!」泥だらけのソックスに、ローファーの靴迹が付け加えられた。《END》