毎月の第二、第四水曜日には、安芸辽一(あきりょういち)にとって、なによりも优先させるべき约束が待っている。
午后の一时、もうずいぶん见惯れた部屋の中を辽一はぼんやりと眺めた。
频繁に使うせいですっかり定番になった部屋は、壁纸の小さな模様までも覚えてしまっている。ひとりでチェックインして、苦さを伴うときめきを运ぶ相手をじっと待つ间、することもなくただこの部屋を眺め続けたせいだ。
このホテルは、表向き风俗営业の形をとってはいないけれど、その筋では有名な穴场だ。内装はあえて洒落たビジネスホテルふうにしつらえられているが、窓には大きな目隠しがあって、采光は悪くないものの、外部を见ることも、见られることもない。
要するに用途がひとつに决められているからだ。こんな场所で夜景を――あるいは昼に利用するものも多いだろうが――见るものなどいないから、かまわないのだろう。
「もうすぐ一年で、月に二回、だから……」
わざとらしくひとり呟き(つぶやき)、そのあさはかさに自分で呆(あき)れる。计算するふりなどせずとも、この部屋を利用するのがこれで二十一回目だとわかっていた。
虚势(きょせい)を张る必要もないのに平然とした表情を浮(う)かべているのは、このあとにやってくる时间に负けないためでもある。
眉间(みけん)に痹(しび)れを覚え、颜が强(こわ)ばっている気がした辽一は、备(そな)えつけの镜に青白い颜を向けた。
色素(しきそ)の薄(うす)いふっさりとした睫毛(まつげ)が目元に影を落とし、まるいラインの小振りな唇だけがいやに赤い。それが何度も唇を噛みしめたせいだと気づくと、ひどくいやになる。
二十代半ぼにもなったというのに、辽一の颜立ちには男臭い印象がいっさいない。するりと细い颚から続く、しなやかなラインを描く颜はもともと色白だが、この日はひどい紧张を覚えているせいか、血の気が失せきっていた。
学生时代にはモデルのスカウトを受けたこともあり、雑志に写真が载ったこともある。きゃしゃでさほどの长身でもないため、将来の见こみがないとアルバイト程度でモデルはやめたけれど、いまだに中性的で人形めいたきれいな颜だとよく言われる。
だが、颜が整っているのもいいことばかりとも言えない。すっきりと切れ长の目はクールな印象を与えるようで、ふだんから気をつけてやわらかく穏和な表情を保たないと、冷たいとかとっつきにくいなどの、悪印象を持たれてしまうのだ。
(だめだ。もっとふつうの颜しなきゃ)
ことに今日は、いつも以上に平静な颜でいなければならない。线の细い鼻筋に紧张のあまりか皱が寄っていて、辽一は指先に摘んでそれを解くように努力した。
肩を上下して息をつくと、頼りない薄い骨が胸に引っかかるような気がした。
やわらかいラインのシャツの下、尖った肩胛骨が艶めかしく呼吸に连れて动くのがわかる。ゆったりとしたデザインの、手触りのいいこれは、これから部屋を访れてくる男が「似合う」と言ったものだった。
最后と决めた日に相手の気に入りの服を着てくる自分の心情が、健気なようないじましいような、复雑なものを孕んでいて、失笑が漏れる。
(俺はいったい、なにをしているんだか)
ベッドの端にきゃしゃな身体を腰挂けさせたまま、辽一は深く吐息した。不意に、どうしようもない胸苦しさがこみあげてきてうっかり涙ぐみそうになる。
「しっかりしろ……」
唇を何度か啮んで瞬きを缲り返し、目尻にたまったそれをごまかした。そしてこのあとで切りだす别れの言叶を、胸の中で缲り返す。
(悪くなかったよ。ありがとう。……违うな、楽しかった? 俺が楽しんでどうすんだ)
嬉しかった。それがいちばんふさわしいけれど、そんなことを伝えて未练を知られるのもまっぴらだ。
空调の効いた部屋の中では季节感がないけれども、寒の戻りか外はずいぶんな冷えこみだった。やがて来る春を思わせるやさしい色合いの阳光も、この部屋にまでは届かない。
「准(じゅん)くんは、制服、できたのかな」
あの爱くるしい幼児が私立小学校のかわいい制服を缠った姿を想像して、これは本心からの微笑みがこぼれる。
辽一の爱した彼のひとり息子は、こんな自分にもずいぶんとなついてくれて、本当に浊りなく慈しむ気持ちもわきあがった。
それでも、ここからはじまった関系だから、ここで终わらせるべきなのだろう。
一年。长かった。充分だった。
最后に、やさしくしてくれて嬉しかったと、せめて笑って言えれば、幸いなのだけれども。
「春海(はるみ)さん……」
ロにした名前の响きから受ける、穏やかなイメージにやや不似合いな、硬质な颜立ちを思い出せば胸がつまる。
今日はこのままいっそ、约束を忘れてくれまいか。愿うのは、そうすれば终わりの言叶を先延ばしにできるだろうかという、あさましい気持ちのせいだ。
それでも律仪な彼がそれを违えることはないのだろうと、わかっているだけにつらい。
会いたいけれど、会いたくない。心乱れたままシーツを掴んだ辽一の细い指は、白く强ばっていく。
时计の针が奏でるささやかな音さえも、辽一の张りつめた神経にひどく障って、うるさかった。
【好吧,才这么一点日文我就翻得想哭了,所以非常佩服那些大神们。不管怎样,如果有兴趣的亲们凑活着看吧……我去睡觉了!!!请帮我指正错误,谢谢030】